第16号 「スピード」「わかりやすさ」「価格設定」の3つで低価格志向に対抗せよ!

■低価格思考が再び始まった

外食業界で再び価格重視のメニューやキャンペーンが広がり始めた。

「松屋」は豚汁や一部定食を値引きするキャンペーンを打ち出した。「松屋」では2014年7月に従来の「牛めし」より高い「プレミアム牛めし」を一部店舗に投入していた。この2月の売上実績で見るとプレミアム牛めし販売店は前年同月比で約6%の増収、プレミアム牛めしを販売していない従来の牛めし販売店は8%増。前年同月はほぼ同水準の伸びだったことから見ても、より低価格品を扱う店舗に勢いが出ている。このまま低価格志向の流れに負けては、業績は益々厳しくなる。ではどのように対抗し、単価アップを実現すれば良いのだろうか?

そのキーワードは「スピード」「わかりやすさ」「価格設定」の3つ。

対応のスピードアップで顧客の不安を解消する

あるリフォーム会社では、イベント会場に「概算見積もり受付所」を設置し、相談、現地調査のアポイントにつなげ、平均客単価を75%アップした。

リフォームを考える消費者にとってまず不安なのが予算だ。施工事例300件分をパネル化して壁一面に展示。最も近い工事内容を見て、その場で費用がわかるよう工夫している。関心を持って見ている来場者に声がけし、相談、概算見積もりに誘導していく。来場者がしたいリフォームのイメージが見つかりやすく比較ができるので、他社との比較は排除。競合への流出も防いでいる。

また、インターネットからの問い合わせか?電話での問い合わせか?によってもお客様の心理状態は違う。

①インターネットでの問い合わせは気楽さ、気軽さ重視

・単純に人と話すのが苦手なのでメールで済ませたい。

・メールなら電話でも言えないような事も言えてしまう。

・顔を合わせるわけでもないし、話すわけでもないので、相手に失礼という気持ちが薄い。ダメもとで図々しいお願いができる。

気楽さ、手軽さ、という心理が大きい。

②電話での問い合わせはスピード重視

・急いでいる。メールでの回答では待ちきれない。商品・サービスに興味があり、自分が求めている事を実現してくれるものなのか?という事を早く確認したい。それで納得できれば、すぐに買いたい。

・本当に悩んでいるので、解決策を提示してもらえるなら、それにかかる商品やサービスを購入する気持ちがある。

・メールで文章にするとすれば、自分でもまだ何を質問したいかもよく整理ができていない状態だが、電話で話せばなんとなくわかってもらえるかもしれない。

急いでいる、解決策をすぐ聞いて依頼したい、という心理が大きく、スピードを重視している。

 インターネットより、電話での問い合わせに対するレスポンススピードを速くする必要がある。

わかりやすい「概算見積もり」で本音を引き出す

今や相見積もりがあたり前で、顧客からの依頼も電話やインターネットなどを通じて気軽にできるようになっている。しかし、そのような依頼で顧客の本音を理解できるだろうか。だからと言って「見積もりしてほしい」という顧客に「現場を見てからでないと・・・」では、その時点で受注機会を失ってしまう。まずは迅速に「概算見積もり」を伝えて顧客の「本当」の予算や希望などの本音を引き出すことが大切である。そのためには、精度を持った「概算」であることが必要となる。概算見積もりを作るときの注意点は次の2つ。

① 過去の実績から部位別の積算表を整備する
単価表は部位ごとに、自社の施工事例をもとに作成する。例えば屋根であれば瓦やスレートなどの素材の単価、面積に応じた施工費用などを数量化し計算しやすくする。

入力がある程度正確な数字であれば、概算と本見積もりが大きくずれることはない。協力業者への発注金額のバラツキも是正され、標準原価の設定も可能だ。

② 積算表を社員全員が共有する

 整備した積算表は、社員全員が見られるようファイリングするか共有フォルダにデータとして保管する。スタッフが誰でもお客様の見積もりに関する問い合わせや相談に応えられるようにする。今や「現調してみないとわからない」は通じない。失注するリスクが高まるだけだ。今後、概算見積もりを素早く、正確に出せる企業がライバルに差をつけられる。

■松竹梅の法則で価格を設定する
① 松竹梅の法則

人は商品やサービスを選ぶとき、無難な選択を選ぶ傾向がある。例えば、鰻屋で「松・竹・梅」というメニューがある。このとき、多くの人が真ん中の上のメニューを選ぶ。これは、数ある選択肢のなかで、一番安い商品や最も高額なサービスを選ぶことを敬遠する心理が働く。これを、行動経済学で「極端回避の法則」という。

一番売りたいと考えている商品「A」があるとしたら、その他に比較ができる商品を2つ並べて、3つの中で商品「A」が真ん中のコースになるようにすれば良い。そうすることで、商品「A」が最も売れていくようになる。 「選択肢が3つ」というところにポイントがある。

② お客様が決断しやすい状況を作りだす

例えば、ひとつしかない旅行プランがあるとする。そうすると、他のプランと比較することができないため、良さが理解しずらい。お客様は決断できなくなり、他社商品と比較してしまうのである。

価格設定するときは、「どのようにしたらお客様は決断しやすいか?」を常に真剣に考えなければいけない。

■値決めはリーダーの重要な仕事

『値決めは経営そのものである』と京セラの稲盛名誉会長は言う。

「低価格志向は世の中の動きだからしょうがない」といって認めていては赤字会社になる。これこそリーダーの大きな怠慢なのである。
お客様が納得し、喜んで買ってくれる最も高い値段、それよりも低かったらいくらでも注文は取れるが、それ以上高ければ注文が逃げる。このギリギリの一点を考えに考え抜いて見つけ出し、あらゆる工夫を行い受注をとるようにしなければならない。

それを決定するのがリーダーの大切な仕事であることは言うまでもない!

 

ワンポイントクエスチョン【価格設定を部下に任せていませんか?】

代表取締役 日小田正人

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【16号】2016年5月1日

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