第27号 中小企業採用のコツは「採ってはならない人を採らない」!

■「とりあえず~」では採用活動は失敗する

 4月から新年度がスタートする。中小企業経営者が経営計画を作る時に頭を悩ませるのは「新規顧客の獲得」「既存顧客との関係強化」「人材の確保」「人材育成の強化」の4つである。その中でも、先を見ている経営者ほど「人材の確保」に頭を悩ましている。

 中小企業では人を余分に採用することが難しいから退職してから採用する。慌てて採用するから、応募があると形だけの面接を行いとりあえず採用してしまう。最初は良くても次第に「こんなはずでは・・・」と頭を抱える。居酒屋で銘柄も確認せず「とりあえずビール」と頼み、2杯目は本当に飲みたいものを頼む。例えは悪いが採用活動がこれと同じでは良い人財は採用できない。

■なぜ辞めるのか?退職理由に見る職場の不満

 採用を成功させるには、退職する理由をつかむことも大切だ。対象が違う3つの調査結果からまとめると、待遇や労働条件への不満はあるものの、「上司や同僚・先輩・後輩への不満」「キャリア成長が望めない」など、人間関係やキャリアへの不満が退職の引き金になっている。この結果を経営者や管理職は肝に銘じて、自社の退職理由のホンネを掴んで欲しい。採用時のミスマッチも減らせる。

「平成27年雇用動向調査結果」

退職を決めた理由で「定年・契約期間の満了」「その他」を除いた場合、

【男性】
1位 給料等収入が少なかった
2位 労働時間、休日等の労働条件が悪かった
3位 会社の将来が不安だった

【女性】
1位 労働時間、休日等の労働条件が悪かった
2位 職場の人間関係が好ましくなかった
3位 給料等収入が少なかった

出典:厚生労働省「平成27年雇用動向調査結果の概況」

給与への不満、労働条件、人間関係、会社への不安が挙げられた結果となった。

◆リクナビNEXT「退職理由のホンネランキングベスト10」

転職サイトのリクナビNEXTが転職経験者に行った調査
1位 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった
2位 労働時間・環境が不満だった
3位 同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった
4位 給与が低かった
5位 仕事内容が面白くなかった

出典:リクナビNEXT「退職理由のホンネランキング ベスト10」

労働条件や給与への不満もあるが、それ以上に上司や同僚・先輩・後輩への人間関係の不満で退職する人が多い。

◆「ヴォーカーズ平成生まれの退職理由ランキング」

就職・転職のための社員口コミサイト「Vorkers」では2015年4月に新卒入社で3年以内に退職した平成生まれの若手社会人を対象とした調査

1位 キャリア成長が望めない
2位 残業・拘束時間の長さ
3位 仕事内容とのミスマッチ
4位 待遇・福利厚生の悪さ
5位 企業の方針や組織体制・社風などとのミスマッチ

出典:ヴォーカーズ「平成生まれの退職理由ランキング」

1位に「キャリア成長が望めない」が挙げられている。労働条件も上位にあるが、若い社員はキャリアアップしやすい環境を求めて転職している。

■中小企業採用のコツは「採ってはならない人を採らない」

 中小企業の採用活動は「良い人材」を採る活動ではない。採ってはならない人を採らない活動といえる。
採用にあたってブレないための基準作りは不可欠だ。特に能力・知識・経験よりも人物タイプや個性・適性、向き・不向きを重視するなど採用で譲れない基準、いわゆるマッチング基準を設けておく。これが中小企業の採用成功のコツである。やる気・意欲は大事であっても適性がなければ後でお互いに苦労してしまう。
 中小企業に応募してくる人は「営業も企画もできます」という人はまれで、『緻密さに欠けるが人前に出すとそれなりに売ってくる』という人、『部下は一切使えないがそれなりに器用に何でも売る人』など。そのような人を組み合わせて組織をつくるしかない。そして、この中で少しでも脈のありそうな人に権限と責任を与えながら幹部へ育てる体制が必要なのだ。

■求人媒体に掲載したときにやってはいけない3つのNG

 中小企業の多くは求人媒体としてハローワークを活用している。無料が利点だが20歳代の応募はほとんど期待しにくい。有料サイトも数多くあるが、成功報酬という形で『採用が決まった際に規定費用の支払いが発生する』掲載無料というサービスも増えている。試してみる価値は十分ある。

① 出しっぱなしはNG

 採用できないからといって求人を出しっぱなしにしてはいけない。応募者にしてみれば、「人気のない会社」もしくは「人が辞めている会社」に見えてしまうので要注意だ。一定期間空けて再掲載する。そのときは求人票や募集要項を見直して更新しよう。応募者の意識は刻々と変化している。

② 自分たちの業界用語はNG

 業界用語の言葉はNG。一般用語を使う。「業務職募集」とあっても、サッシ業では、サッシの配送・組立・加工をする仕事。タイヤの卸売業では、商品の受発注の仕事。応募者はタイトルで判断する。「サッシの加工と配送業務」「商品のコールセンター業務」のようにわかりやすく表現する。

③ 応募や問い合わせの返信の後回しはNG

 いまどきの応募者は何社も応募する。企業から返信された順に接触が始まるので、応募者への返信が遅くなれば後回しになる。応募があったら直ちに選考を行い、応募者には即返信する。採用まで他社に出し抜かれてはいけない。

■適性試験は面接前に行い、面接で確認のために使う

 適性検査は、面接では計りきれない応募者の素質を見るために行われる。能力検査と性格検査の2種類に分かれる。中途採用では、組織とのマッチングを重視するので行動・志向・情緒の特性を測る性格検査をお勧めする。 
適性検査は面接前に行い、その場で結果が出るタイプが良い。面接でその結果を確認するために使う。例えば5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を行う会社で、適性検査で『物事の整理整頓が苦手』と書かれていれば、「整理整頓は得意ですか?」と質問してその実績やエピソードを聞き出して掘り下げる。矛盾がないか、できなければどのように改善しているかを聞き出して選考の判断材料とする。

■「採ってはならない人を採らない」と退職者は減る

 欠員で採用する時は気が焦り、本来採ってはいけない人を採ってしまう。入社時は救世主の輝きを放ってもその輝きはすぐ消えてしまう。遅かれ早かれ、退職の道を歩む確率が高く採用された人も不幸だ。
 焦る気持ちを抑え、「採ってはならない人を採らない」採用活動を行うことが最善の策である!

ワンポイントクエスチョン【あなたの会社で採りたい人材はどんな人ですか

代表取締役 日小田正人

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【27号】2017年4月1日

日小田正人の著書「人の心を動かす使える質問」はこちらから