第28号 「雑談」を「商談」に変える質問で売り上げが倍増!

■営業活動とは、「売り込み」でなく「質問」すること

 売れない営業マンを見ていると、早口にまくしたて、一方的に会話の主導権を掴もうとしている。営業マンが押しつけがましい存在と感じるのもこのせいであろう。しかし、トップ営業マンは自分が話すかわりにお客様の話をよく聞く。人には耳が二つ、口が一つだけついている。なぜだろうか?その理由をトップ営業マンは知っているのだ。

 営業で成果を出すためには、自分が話す少なくとも2倍はお客様の話に耳を傾けなくてはならない。営業とは言葉で圧倒して売り込むのでなく、反対にお客様に語らせるのが仕事なのである。

 お客様の悩みを解決することが仕事であり、売上はお客様が悩みを解決した感謝の証である。

■お客様に話していただくために必要なこと

 次の営業トークを聞いてどう思われるか?

「いま、これ以上のおすすめのトイレはありませんよ。他社のものなど比べ物にもなりません。すぐ買われたほうが良いですよ」

「このキッチンは限定商品でセール中です。他店にもないものです。これ以上安いのはありませんよ」

 両方とも、ムリに商品を押しつける営業トークだ。この営業マンは、お客様が聞きたいことでなく、自分が話したいことを一方的に伝えている。自分のことだけを考え、「よし、これが売れれば目標達成ができる。このトイレがお客様に役立つかどうかは私の知ったことでない」と言っているようなものだ。大概の見込客は逃げてしまう。

■トップ営業マンは質問して導く

 トップ営業マンは無理強いなどしない。その代わり、お客様を導く。お客様の信頼を高め、話に耳を傾けたり、質問を投げかけたりしながらお客様が聞きたい情報を提供する。その合間に自社の商品やサービスをさりげなく伝える。営業マンはあなたから会話をするきっかけを作り、そして質問しながらお客様の答えに合わせて会話の方向を決め、クロージングへ導いていくのだ。

 営業マンの発する言葉一つひとつがとても重要な意味を持つ。お客様への質問の仕方ひとつが成否の分かれ目となることもある。

■雑談を商談に変える質問のしかた

 初対面の人にも商品を買っていただいたり契約をとることが上手な営業マンがいる。そんな人は「質問」を効果的に使っている。相手がこちらの提案を受け入れるのは、「自分にとってこれは必要だ」と感じるから。その人にとって「必要なこと」を質問で引き出すのだ。

トップ営業マンが行っている雑談で関係性を深め、商談につなげるポイントは次の7つ。

◆雑談を商談に変える質問の流れ

①私は○○の生まれですがどちらのご出身ですか?

 自己紹介の後、相手の名前にまつわるエピソード、出身地や家族構成などを聞き、相手のバックボーンを尋ねる。自己紹介を先に行い、こちらの情報をまず伝えることで、相手も構えずに答えやすくなる。同じ故郷や、同じ長男という立場など、そこに共通点があれば、さらに会話がつながり心の距離が近づく。しっかり相手の話を聞くことで信頼感が生まれる。

②この仕事を始めたきっかけは何ですか?

 相手がどんなきっかけで、今の仕事を選んだのか聞いてみる。仕事がらみの話題も、商談の中では違和感がない。成功談や失敗談、多くのエピソードが聞ければ理想的。
何気ない質問だが、相手の考えが30分以上続くことも珍しくない使える質問である。「仕事を始めたきっかけ」が呼び水となり、仕事に対する想い、これまでの苦労話などが芋づる式で引き出せる。
※住宅などの場合、「お住まい選びを始めた気っかけは何ですか?」「リフォームをしようと持ったきっかけは何ですか?」

③うまくいったきっかけは何ですか?

 会話の中から、または、以前から話に聞いている相手に成功体験を語ってもらう。成功のきっかけや要因を聞くことで相手の問題解決能力や、行動の傾向、こだわりがわかる。

④将来はどうありたいですか?

 頭に描いている将来の自分の理想像や、目指しているモデルについて語ってもらう。ここがはっきりと答えられる人は、ゴールが明確。逆に、答えが抽象的だったり、答えに困る人はゴールが固まっていないので一緒に考えれば関係はより深まる。 

⑤その理想の未来に向けて解決したい課題はありますか?

 将来の理想像を聞いたら、そこへ向かうための課題があるか。あるならば、何かを教えてもらう。雑談の段階で好印象を与えれば、心を開いて話してもらえる可能性は大きくなる。

⑥その課題の解決に、○○や○○がお役に立ちませんか?

 ここで初めて商談にかわる、その人が欲しいと感じる商品やサービスの説明をする。押し付けでなく、相手の課題を克服するため、手助けしたいという姿勢を貫く。「お役に立てれば幸い」という態度で聞くのだ。
 目標達成できない営業マンは①~⑤がなく、いきなり⑥を伝える対応が案外多い。最悪は①~⑥もなく、商品説明を淡々とまくし立てる営業マンだ。 

⑦何か疑問や不安がありますか?

 相手との話がまとまった場合は、納期や金額など、具体的に聞きたいこと、不安はないか尋ねてみる。疑問が出れば、それに対しての解決策を提案する。

◆ポイント◆

 相手の課題や克服に応えられない場合は、問題解決に役立つ情報や人(会社)を紹介する。それがうまくいけば、相手はあなたに感謝するだろう。人は「良くしてもらったことにはお返しをしたい」と感じるもの。次はあなたの仕事を誰かに紹介してくれる良い流れが起こる。これを「返報性の法則」という。
もし、提案や事例を話す場合、勝手に提案するのでなく「よろしければ解決策や事例をお伝えしてもよろしいでしょうか?」と相手の了解を得てから話すことで、相手の聞く姿勢が変わる。
「○○さんと同じお悩みをお持ちのお客様が、このようにお悩みを解決できましたがいかがでしょうか?」「△△にこだわる方もいらっしゃいますが同じではありませんか?」など、類似の解決事例を提示して協力姿勢を示すのだ。

■質問を活用してお客様から信頼される営業マンになれ!

 面識がないお客様と会話をするのが営業の仕事である。重い雰囲気にならないよう自分で無理をして話す必要はない。相手が話したいことを気分良く語ってもらい、その課題解決を提案すれば自然と業績は上がる。そのための「切り札」が質問なのである!

ワンポイントクエスチョン【お客様の心を動かす、使える質問を数多く持っていますか?

代表取締役 日小田正人

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【28号】2017年7月1日

日小田正人の著書「人の心を動かす使える質問」はこちらから