第22号ベテラン病社員の指導方法はこう行え!

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■変化に対応できない企業は生き残れない

 国内を代表する大手企業は売上高の58.3%を海外で稼いでいるという。今後、その比率は国内市場の鈍化を受けグングン上昇し、さらに海外での売上が比率を高めようとしている。大手企業は劇的な変貌を遂げているのだ。人口減少が加速し、何よりもネットを活用した消費者の購買行動の変化に企業はどう対応していくかが、今問われている。厳しい市場の変化に対応できない企業は間違いなく淘汰される。これまでのビジネスモデルの延長では、縮小はあっても成長は見込めない。発展を遂げるには新しい事に取り組むチャレンジ精神と過去の成功体験をぶち壊す全社員の意識改革が必要だ。

『最も強い者が生き残るのではなく、
最も賢い者が生き延びるでもない。
唯一生き残るのは、変化できる者である』

チャールズ・ダーウィン(イギリスの自然科学者)

■変わることができないベテラン社員の共通点

 これだけ時代が変わっているにもかかわらず、過去のやり方に固執し続けているベテラン社員が目立つ。ズバリ言うと、ベテラン社員の意識改革で企業の収益が決まると言っても過言ではない。今多くの企業が、変われない社員に頭を抱えている。そこを解決しないことには組織も活性化せず、若い社員も絶対に育たない。変われないベテラン社員には、次の四つの共通点がある。

1.勤続年数や年齢に油断して自分の実力を過大評価している

「井の中の蛙、大海を知らず」の諺とおり。視野が狭くただ社歴が長いだけである。しかし、このタイプは成長がストップしている自分にうすうす気づいてはいる。ただ変なプライドが高くそれを認めたくないだけである。固定概念が強く、信念とは言っているが単に頑固なだけである。

2.仕事の専門性がなく深みがない

 妥協のない仕事、深堀りした仕事で専門性は磨かれるもの。専門性の弱いベテラン社員は、全てが中途半端でアキラメ癖が染み付いている。あるべき姿は20代で仕事の基本をマスターし、30代で専門性を身につける。実績が上がらないベテラン社員にならない為には、若いうちに仕事への姿勢を厳しく指導する事が重要なのだ。甘やかしたつけは後々大きくなる。

3.新しい分野を取り込むパワー不足と勉強不足

 これまでのやり方を変え新しい分野にチャレンジするには、かなりのエネルギーを要する。営業においても、既存客を守ることと新規開拓をやり遂げるには10倍以上のエネルギー格差がある。これと同様で変わるには、入社時の素直さとバイタリティが必要となる。それと併せて新しい分野の知識習得も絶対条件だ。変われる人間は学ぶ姿勢が強く、「一生勉強」と自覚しているものだ。

4.管理する事が仕事だと勘違い 現場の実態把握が弱い

 これは、役職を与えられ若い社員の面倒もみないといけない入社10年目前後の中堅社員に多く見られる現象だ。「自分のメインの仕事は若手社員を動かすことだ」という、そこに盲点がある。まずは、自分自身が実績を上げ、どこの誰よりも現場を知り尽くしているかどうかである。変われないベテラン社員は、刻々と変わり行く市場のニーズや変化を肌で感じ取れない。それでは、結果も出ないし、若手社員からの信用も勝ち取れない。
 このように変わる事がなかなかできないベテラン社員は、変化を恐れ変化から逃げ、変化は悪だとさえ思っている。高収益企業の任天堂もほんの20年前まではカルタや花札メーカーでしかなかった。しかし、ファミコンやWIIなどのハードメーカーを経て、今やポケモンゴーなどのコンテンツビジネスへと進化している。ビジネスの世界では、変化する事に背を向けた途端に成長はピタッとストップするのである。

■実績が上がらないベテラン社員への指導のやり方と対応策

 実績が上がらないベテラン社員は動機付けで簡単に意識が変わるといった生やさしい存在ではない。問題のある新興宗教の呪縛からなかなか抜けきれないくらい根が深い。マネジメントする側にとってはこんなに厄介な問題はない。実績が上がらないベテラン営業マンへの現実的な指導と対応は次の6点。

1.いつでも変われる交代要員を採用・育成する

 大企業と違い、中小企業のベテラン社員は経営陣の足元をよく見ている。自分がいないと会社が回らなくなると高をくくっている。実績の上がらないベテラン社員は言葉での指導より、仕組みや標準化で意識改革を促す方が変われる確率は高い

2.異動による新天地での再起に期待する

 かつて広島で活躍し成績不振でヤクルトに移籍した小早川選手は、移籍の年、開幕戦で巨人の斉藤投手から3打席連続ホームランを放ちリーグ優勝、日本一に貢献した。ヤクルト野村監督が救いの手を差しのべた。とたんに大活躍。人間には相性というものがある。積極的な人事異動で見事に復活することもある。

3.悪影響を与えるならトップ直轄とする

 自分で自分の給料を稼ぎ、周りに悪影響を与えなければ一人親方で頑張ってもらうのもひとつのやり方。問題は影響力(悪影響を与える)が強いベテラン社員だ。このような存在を許すと、意欲の高い若手社員の士気が下がってしまう。たとえ人事権はなくとも幹部はトップとよく相談して。「社長付き部長」といったトップ直轄とする方向で検討すべきだ。

4.弱みを補完し合うチーム制にする

 フットワークの悪いベテラン社員は訪問件数が少ない。新人は訪問件数は多いが知識がないためヒアリングが弱く案件化できにくい。どこでもある悩み。医療現場では各専門家が集まり連携して治療にあたるチーム医療が進んでいる。新規開拓は新人に任せ、見込みが出てきたらベテラン社員を同行させヒアリングさせる。互いを補完し合うチーム制にする方法だ。これができるベテラン社員はまだ再生できる見込みがある。

5.役職はそのままで賃金は下げる

 実績が上がらぬベテラン社員はプライドだけは人一倍高い。かと言って仕事の生産性は新人社員と変わらない。これでまともに給与を支払っては企業収益は低下するばかり。給与引き下げは、誰でもモチベーションが下がる。下がった理由を明確にする事と、元に戻る条件を正しく伝える事も重要である。役職は下げていないので周りには体面を保てる。

■幹部はベテラン病社員を生まない厳しい組織を創れ!

 若い時は優秀、今は生産性の低いダメ社員。いわゆるベテラン病に陥ってからの処方箋は打つべき手がどうしても限られ対策も後ろ向きになってしまう。したがって、大切な事はベテラン病を生まない組織体制を幹部が率先して創り上げる事である。そのためには、どんなに良い結果を出しても常に高いレベルのテーマ、目標を与え続ける幹部の指導力にある。
しかし、それ以前に組織を統括するあなた(幹部)自身が実はベテラン病という厄介な「病」に侵されていないか?
「昔は良かった・・・」「自分たちが若いころは・・・」「取引先が力を貸してくれないから・・・」こんな言葉が出始めたらベテラン病が始まっている。じっくり考えていただきたい。

ワンポイントクエスチョン【ベテラン病に効く薬は何ですか

代表取締役 日小田正人

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【営業力強化ニュース22号】